閉塞感の中で仕事をしていた前職時代

大学卒業後、新卒で事業会社の経営企画部部門に就職しました。そこまで大きくはありませんが、東証スタンダードの会社です。そこで私が担当していたのが、IRや中期経営計画の策定、予算の予実管理、取締役会・株主総会の運営といった、いわゆるバックオフィス業務でした。今につながるような経験もさせていただいて感謝しているのですが、どうしても仕事の性質上、内向きというか、自分の仕事が誰にどうつながって、どう貢献しているのかが見えなかった。働いていて、ずっと閉塞感を覚えていました。目の前のタスクを期日までに返して、また次が来て…。やりがいもそこまで感じられず、評価もされにくかった。それでも、入ったからには3年働こうと思い、4年目に転職活動を始めました。

FASで自分のやりたいことを実現する

前職にいる間に、M&Aの事務局として働く機会がありました。そこで、私が証券アナリストの資格を持っていたこともあり、簡易的なバリュエーションを任されたのです。その時に思ったのが、もっとちゃんとメインでM&Aに携わりたいということ。さらに言えば、M&A全体が面白いというよりは、バリュエーションをもっとやりたくなった。バリュエーションは、時価の出し方に様々なパターンや捉え方があり、数字をどう振り分けるかという論点もある中で、「時価総額」という一つの数字を提示するという仕事。その工程がすごく面白かった。当時は、バリュエーションをそこまで深く理解していませんでしたが、もっとやってみたいという気持ちが生まれました。そうした気持ちがある中で、転職エージェントと志望企業を相談するうちに、FAS業務こそが自分のやりたいことを実現できるフィールドだと気付きました。転職活動でもFAS業界をピンポイントで志望し、応募した数社のうちの1つが、AGS FASでした。

無資格者が描くキャリアの可能性

自分は会計士でも税理士でもないので、FAS業務のうち、専門的なスキルが求められるデューデリジェンスはできません。そうなれば、進む道はおのずと、案件のスタートからクローズまでを全般的に支援・進行管理するFA業務がメインになります。ただ、それでもバリュエーションに携われるかどうかが自分の中の大きな軸だったので、会社選びにおいても、その点は重視しました。しかし、応募した数社の面接を受けてみたら、どこも「新聞の一面に乗るような案件を手掛けたいモチベーションがあるか?」、「残業が200時間あるけど大丈夫?」みたいに、とにかく根性とやる気ばかりを問われて…。その中で、AGS FASだけが、私自身がどういう専門性を身に付けたいか、付けられるかという部分を、「FA業務がメインにはなるけれど、バリュエーションにも携われるよ。目指すキャリアとしては、こういう道があるかもね」と、面接の場で一緒に考えてくれたのがとても印象的でした。一方で、タフさが求められる場面もあることや、税理士や公認会計士の資格を持たずに入社することで想定される困難な状況についても教えてくれて、過度に勧誘するのでなく、「最終的には自分で判断してほしい」と言ってもらえたことで、逆に「ここで働きたい」という気持ちが固まりました。

バリュエーションとFAで案件をリード

入社直後は、過去の案件を課題として受け取り、自分で数字を出してみて、それを添削してもらうという練習をひらすら繰り返しました。それからサポートとして小さい案件に入り、その後は規模にかかわらず、主にFAとして案件に関与しています。M&Aに関する業務のうち、デューデリジェンスには、会計の知識が必須で、公認会計士の有資格者はそれを理解できるけど、私は理解できない部分も多く、ビハインドがあることは否めません。一方、バリュエーションは、入社にあたって「チャンスはあるから、やる気があるならやってほしい」と言われたように、無資格の人間が前面に立てる分野です。また、FAも、無資格者が前に出て案件をリードできる仕事です。FA業務を担う人の中には、バリュエーションの部分は外注する人も多いのですが、私は、バリュエーションに詳しいFAになりたいです。価格の話になった時、第三者に振るのではなく、自分が答えられるFAを目指しています。

資本主義の最前線に毎日立っている

M&Aいう仕事は、資本主義の流れやダイナミズムの最前線にその身を置く仕事です。M&Aに関するルールが日々刻々と変わる中で、それに対応しながらクライアントと相対し、最大限の価値を提供する。ディールサイズによっては、広く社会の話題になりますし、そうでなくても上場企業のM&Aは情報が公開されます。市場からどう見られるのかを意識しながら案件をリードしていると、速く激しい資本主義の流れの最前線に身を置いている感覚があり、とても充実感があります。また、前職では、誰に向かって仕事をして誰の役に立っているのか分からない感覚がありましたが、FAS業務では、TOBや組織再編など赤字の会社を救済するような形で携わることもあり、その先で働いている従業員の方たちに自分がポジティブな影響を与えられるというイメージもできます。そこに、すごくやりがいを感じますね。

周囲に刺激を受け、日々成長していく自分

M&Aは、多額のお金が動く世界です。それでも、周囲の先輩方は、良い意味で金額の大きさに影響されません。専門性を持ったプロフェッショナルとして、求められる理想と実務上の着地点を明確に意識して最高の価値を提供する、そのブレない姿勢を尊敬しています。また、勝手なイメージで、資格者は資格を取った時点で知識的に完成されているイメージがあったのですが、入社して分かったのは、会計士や税理士の人たちが実際には資格取得後も常に向上心を高く持っていて、ずっと勉強し続けているということ。些細な疑問に対しても、原本や根拠法まで当たりに行って、自分の中で納得するまで整理して理解するところまでやっている背中を見て、その探求心の強さに、すごく刺激を受けています。私が疑問を持った際にも、すぐに聞くのではなく、自分なりの回答を持っていくことを心掛けていますが、それでも毎回、自分では考えもしなかったような答えが返ってきます。こっちが全速力で追いかけても、向こうも現在進行形で凄いスピードで走っているので、いつまで経っても追いつけないかもしれませんが、少なくとも横にいて信頼できる存在にはなりたいなと思い、走り続ける毎日です。