
公認会計士試験に合格後、大手監査法人に10年以上いました。小売、建設、外食、半導体、エネルギー、医療機器製造など、幅広い業種の上場企業の監査や、アジアを中心としたグローバル企業の監査も担当していたので、年に1回は海外出張に行っていました。他にも、半導体を開発するベンチャー企業や化粧品のOEMメーカーのIPO支援をやったり、財務調査業務とか内部統制構築支援もやったり、独立行政法人や自治体向けの包括外部監査なんていう公会計絡みの仕事もやっていましたね。監査の仕事は嫌いではなかったし、そのままいてもよかったのですが、40歳に差しかかるころに「何か新しいことやるなら年齢的にそろそろ限界かもしれない」と思って、転職活動を始めたんです。そこで転職エージェントに紹介されたうちの1社がAGS FASでした。ちなみに、当時は「挑戦するなら最後のチャンス」と思っていましたが、50歳が見えてきた今、新しいことに挑戦してみようという意欲は、前より旺盛なくらいです。年齢にかかわらず成長に貪欲な他のメンバーに刺激を受けて、自分も若返っている感じですね。

監査法人時代にも、クライアントのM&Aに伴う財務調査で、財務デューデリジェンス(DD)に関わることはありました。その経験が、M&A領域に興味を持つきっかけになりましたし、転職エージェントに紹介してもらった際にも、業務内容がイメージできました。ただ、実際にM&Aの観点から財務DDに携わってみると、監査法人時代のDDとは全然違いますね。前職では、監査の延長としてB/Sを見ているだけでしたが、今はバリュエーションという目的があって、そのためにはどのような情報を集めるべきかを考え、個々の案件ごとに柔軟に対応しなければなりません。前職時代の自分は、監査人の目線からクライアントの財務情報を見ているだけで、その先に広がる景色を知りませんでした。AGS FASに入社してすぐに、「知っているようで知らないことがいっぱいあるんだな」と感じたことを覚えています。
今のポジションはディレクターです。プロジェクトの中核を担って推進していく立場として、財務DD、バリュエーション、PPAの3分野をメインに担当しています。この3分野が、一つひとつが本当に奥が深くて…。まだまだ勉強すること、新しく覚えることが多いし、毎日が「気づき」の連続です。実は、入社当時は「独立も視野に入れて、最低3年はがんばろう」と思っていたんですが、日々新しいことを覚えているうちに、あっという間に6年経ってしまいました。入社前に期待していた以上に、挑戦と成長の機会が多くて、今では「なんでもっと早く転職活動を始めて、この業界に飛び込まなかったんだろう」と後悔するくらい、日々が充実しています。今後も、FAや税務DDなど、挑戦したことのない他の領域にも積極的に携わらせてもらって、トラックレコードを重ねていきたいです。

私が担当する財務DD、バリュエーション、PPAの共通点は、いずれもはっきりした正解がない仕事であること。例えば、財務DDは、クライアントや案件によって求められているものが異なります。案件ごとに最適なものを見抜いて、効率よく進めていかなきゃいけない。さらに、調査してレポートを書いて終わりというわけではなく、クライアントに報告して、納得していただいて、というところまでが仕事です。人を相手にする仕事ですから、いくら本を読んでも答えは書いておらず、そこに奥深さがある。バリュエーションも、実はテンプレートに従って数字を入力すれば、一定のものができてしまうんです。でも、バリュエーションという仕事を理解するに伴って、「怖さ」を感じるようになりました。パラメーターの設定一つひとつに対して、なぜそう設定したのか、それをクライアントや監査法人に説明できるのか、そういう怖さがあります。その反面、やればやるほど引き出しが広がりますし、トレンドや案件ごとに求められているものをどう表現するかを考え出すとゴールがなくて、奥が深い。最後のPPAは、分野自体が比較的新しくて、常識が日々更新されている状態です。昨年までは監査法人に認められた処理が今年は認められない、なんてこともあって、新しい考え方がどんどん育っているので、未知の分野を自分で切り拓いていく面白さがありますね。決められたゴールがなくて、やればやるほど怖さと面白さが見えてくるというのが、財務DD・バリュエーション・PPAに共通する部分かな。

自分は、ディレクターになる前にマネージャーの経験もあるのですが、今の立場では、マネージャー時代よりも全体を俯瞰して見るように心がけています。案件ごとに組まれるチーム単位よりも、さらに視野を広げて組織としての課題に対して、短期的でなく中長期的な解決策を考えていますね。課題解決へのアプローチの仕方とか改善策など、より組織を良くしていくにはどうするべきかを事業部長たちと話し合う点が、マネージャーとは異なる、ディレクターの面白さだと思います。同時に、現場に飛び込むプレーヤーでもありますので、新しい経験から刺激を受けて、率先して知識を増やすことも心掛けています。自身のノウハウやスキルを錆び付かないよう磨き続け、それを組織にフィードバックするのが、ディレクターの役割です。相応の自由と裁量も与えられていますし、それに見合った責任を背負って結果を出すのが、やりがいでもあり、モチベーションでもあります。
AGS FASの特徴は、一つひとつの分野でのスペシャリストが集まっていること。各分野のプロフェッショナルが、互いの専門領域をリスペクトしつつ協業していくところに強みがあります。またAGSグループ全体として、IPOをはじめとする他事業部とコラボレーションする機会もあるので、新しいことに挑戦する機会も多いと思います。もし、AGS FASに入っていただけるなら、自分自身の強みに対する誇りは内に秘めつつ、他者へのリスペクトを忘れず、挑戦への気概を持ち続けてほしいですね。「とりあえずやってみようか」というのはAGS FASの良いところだと思うので、自身の経験を生かしながら、未経験の分野も自分の力になると思って飛び込んでいけると、仕事が楽しくなると思います。