
高校を卒業して、最初に就職したのは、大手スーパーでした。販売員として、売り場で「いらっしゃいませ」と声を出す日々が2年ほど続き、その後、経営を学ぶ専門学校に行ったんです。もっとも、どれくらい真剣に学んでいたかというと、遊んでいた時間のほうが多いくらいで…。それでも、最低限、手に職を付けようと簿記3級の資格を取ってみたら、「意外と嫌いじゃないぞ」って。それで、専門学校は中退して、真剣に会計の勉強を始めました。最初は税理士を目指していたんですが、税法の暗記が性に合わず、結局公認会計士を目指すことにして、試験に合格するまで2年かかりました。ただ、合格した2011年は公認会計士の就職氷河期で、半年くらい就職活動をして、唯一入社できたのが、ある上場企業の経理財務部門でした。

経理財務部門で監査対応を行っていた時期に、監査を担当していた相手から声をかけられ、次に働いたのが大手監査法人です。監査法人では、国内上場企業の監査を担当しました。業務内容は好きだったのですが、数年経つと、「だいたい監査のやり方は理解したけれど、この先これだけを数十年やるのか」と思うようになって…。特に、監査は過去の数字をチェックする後追いの性質が強いので、もっと未来に向かって何かを作る仕事がしたいと思い、転職を決めました。転職活動にあたっては、特にM&Aに関与したいというビジョンがあったわけではありません。実は、転職活動をしていた頃は、「3年ぐらいで独立しよう」と思っていました。その頃は、AGS FASがどんな会社かも関係なく、独立に必要なスキルや能力さえ学べればいいと考えていて…。生意気にも、独立したい意思を、面接の場でも伝えたんですよね。すると、予想以上にそれを受け入れてくれたのです。「独立したとしても、今後も関われるような形にしていければいいね」と言ってもらえて、とても嬉しかったんですよ。面接時に感じた雰囲気がとても良く、その時の転職活動では、AGS FASを1社目に受けたのですが、内定が出て即決でした。
入社後の印象的な出来事でいうと、入社して9ヵ月で金融機関のFA部署への出向が決まりました。もちろんFA業務は未経験でしたから、一から勉強です。しかも、こちらは会計の専門家として出向しているので、先方からM&Aに関わる会計や税務の相談がどんどん持ち込まれるんです。そこで「分かりません」とも言えず、東京駅の近くの本屋に駆け込んで、懸命に調べて、会社に戻って、あたかも最初から知っていたかのように答えるという日々でした。とにかくM&Aに関することなら何でも聞かれるので、いわば千本ノックみたいなもので…。大変でしたが、FA業務を現場で学びながら、会計の専門家としての「地肩」も鍛えられる、非常に良い経験になりました。出向先で学んだことと、今やっている仕事は必ずしも同じではないのですが、FAとして多くの案件に関与したことでM&Aのプロセス全体が理解でき、力の入れどころや要点を見極められるようになったのは、大きなプラスです。また会計や税務についても、基本的には自分で解決ができるようになれたり、何事につけ視野を広く持てるようになったりしたのも、今の自分の力になっていますね。

出向から戻ってきて以降は、現在に至るまで、財務DDもやりつつ、メイン業務としては上場企業のFAとバリュエーションを担当しています。どちらも、DDなどと異なり、資格が必要ない分野ですが、私の場合、公認会計士の資格があることでアドバンテージを得られていますね。例えば、FAは、M&A関連業務の中でも、スケジュールを自分で決められるのが面白い仕事です。大きな枠組みはあるのですが、それをどう進めていくかを自分でコントロールできる裁量が大きく、仕事の進め方に工夫し甲斐があります。会計・税務の疑問点が出てきた際に、普通であれば、いったん会計士などに確認をして、その答えを待って…と時間がかかるところを、私なら自分で答えられるため、スケジュールに余裕ができて、より仕事の進め方をコントロールできます。もう一つのメイン業務であるバリュエーションは、会社の価値を算定する仕事で、こちらでも、会計士の資格や出向時代の経験が役に立っています。人によって出てくる答えが変わり、しかも、どれか1つが正解というものではないので、あらゆる選択肢の中から、なぜその方法を取ったのか、どういう根拠があって算出したのかを説明し、相手を納得させる必要があります。上場企業であれば、監査法人から「この数字はどうやって出したの?」と数十問の質問が飛んできて、その全てに論理的に答えなければいけません。大変ですけど、知識を蓄えたり考えたりすることが好きな人なら、非常にやりがいのある仕事だと思います。

AGS FASには、優秀な人が多いと思います。複数の業務を効率良く回せるというよりも、DDやバリュエーションといった各分野において、「この人に聞けば解決できる」というスペシャリストが多いんです。それは、AGS FASが、組織として一つでも多くの案件をさばくのではなく、一つの案件ごとにしっかり取り組んで、考えて作業できる環境を用意してくれているから。メンバーの一人ひとりが、案件ごとにじっくり考えて、学ぶことで、個人としても組織としても経験や知識が蓄積され、レベルアップできているのだと思います。自分自身も、今は上場企業のFAを得意領域としていますが、これまでやったことのない業務もどんどん手掛けていきたいです。
今後、新しく入社される人も含めて、自分とは違うタイプの人とも仕事をしていきたいです。自分では埋められないような知識や経験、バックボーンのある人と一緒に働いて、いろいろ学びたい。その代わり、自分の持っている経験や知識を共有できるので、そうやってお互いスキルアップを図っていければ最高ですね。現職で公認会計士をされている方であれば、「今の仕事も楽しいけれど、新しい挑戦がしたい」という気持ちのある人が、高いモチベーションを維持できるので、向いているのではないでしょうか。ちなみに、自身の独立については、今も考えていないわけではないのですが、リモートワークや公私のメリハリなど、今の環境が気に入っていて、積極的に転職する理由がなくなってしまいました。今の環境で成長できている実感もあり、挑戦したいこともまだまだありますので、このままずっと、AGS FASにいるかもしれませんね。