
大学を卒業した後の就職先を考えるにあたって、もともとサラリーマンよりも経営側に入りたかったんです。ただ経営者になるのはなかなか難しいので、じゃあ経営側に携われるような仕事ということで、金融系の就職を志望していました。ただ、なかなか良いと思える就職先が見つからなかった。そこで、資格を取ろうと思い立ち、税理士の勉強を始めました。そして、一科目に合格したところで、家族経営の会計事務所で働き始めたんです。ただ、そこには1年半ほど勤め、科目も増えたところで、次のステップアップとして証券会社に転職しました。働きながら税理士の勉強を続ける中で、組織再編というテーマに出会って、「これを仕事にしたい!」と思ったからです。組織再編は、法人税の中でも特に複雑な領域ですが、そこが面白かったんです。それで、証券会社の引受審査の業務であれば、組織再編に関われるんじゃないかと思ったのですが、実際に入社してみると、引受審査に従事したのは3ヵ月ほどで、その後は財務経理部に異動となりました。もちろん、当時の上場企業の税務申告業務も、今にしてみれば良い経験だったのですが、当時は物足りなさを感じていました。

証券会社には2年半ほど勤めましたが、夫の転勤で退職し、海外に移住しました。海外には5~6年いたのですが、その間は働けない期間が続きました。時間はあったので、そこでも税理士試験の勉強を続けてはいたのですが、慣れない海外生活の中でモチベーションを保つのも難しく、結局本腰を入れて勉強しだしたのは、帰国が見えてきた頃からですね。帰国と同時に、大手の税理士法人に就職しましたが、それも、大手であれば組織再編案件に関与できると考えたから。ところが、配属されたのは資産税の部署でした。組織再編業務を半ばあきらめて、事業会社への転職を模索していると、「組織再編をやりたいならぴったり」と勧められ、財産コンサルを行う事業会社に併設された会計事務所に移ったのですが、やはりそこでも従事したのは資産税でした。ただ、そこでは、バリュエーションのような、今につながる経験も積めました。結局、「あそこなら組織再編に携われるかもしれない」と転職してみたら、実際にやるのは資産税…という流れが、その後も数社続きました。そのような期間が7~8年間続き、もうどこに行っても一緒で、組織再編をやりたい気持ちはあっても経験すら積めないのか、とあきらめかけていたタイミングで、転職エージェントの方からAGS FASを紹介されたのです。
そんな経験を経てきたので、AGS FASに入社した際も、組織再編に真正面から取り組めるとは、正直期待していませんでした。M&A領域であれば、今までやってきた株価算定などのスキルや経験が役に立つんじゃないか、たまに組織再編案件にも少し関われればいい、くらいの気持ちでしたね。それが、入社してみると、「税務デューデリジェンス(DD)をやってもらいます」と言われて…。税務DDの細かい内容は、AGS FASに来るまで理解していませんでしたが、税務DDとはつまり、M&Aに係る対象会社の税務上のリスクを洗い出す仕事。そこには当然、法人税務の幅広く深い知識が求められ、組織再編も含まれます。また金融機関への相談対応も担当していますが、そちらでも組織再編がよくテーマに挙がります。私はこれまで、法人税の中でも特に複雑な組織再編の勉強が楽しくて、それをずっと続けてきました。でも、今まではそれを全然生かせなかったどころか、法人業務もままならなかった。それがAGS FASに来て、知識や経験を生かせている実感があります。勉強と実務が繋がる時が、一番楽しいです。今は、やりたかったことがやれていると、心から思います。

税務DDは、税理士のスキルの集大成であり、税務知識の集大成でもあります。幅広く知識を備えていないといけないし、知識だけでなく経験や、先を読む力も求められます。それだけ難しく、やり甲斐のある仕事です。財務DDに関与する税理士は知っていても、税務DDに関与する税理士以外のメンバーを知らないので、それだけ税務DDは専門的で、税理士の強みを生かせる分野なのだと思います。今までは、なぜ私は税理士を選んだのだろう、会計士の方が良かったんじゃないかと思ったことがありました。でもAGS FASに来て、初めて「自分が税理士で良かった」と思えたんです。また、M&Aプロフェッショナルの仕事は、金額の大きさが、会計事務所のルーティンワークとは大きく異なります。それだけ大きな期待をクライアントから寄せられますし、その分だけ、私たちがいただくフィーも大きい。その緊張感が、プレッシャーでもありますし、成長にも繋がります。過去の業務においても、勉強しようという気持ちは常にあったのですが、経験だけでどうにかなってしまう部分も少なからずあった。でも、M&A領域では、経験だけに頼った仕事は通用しません。だから、ここだと成長するんですよね。前職までの1年間と、AGS FASでの1年間は、中身の濃さが全然違うと思います。

私がAGS FASに入った頃は、まだ女性のフロントメンバーが少なかったのですが、現在はぐっと人数が増えて、風通しがよく居心地のいい環境になりました。税理士や公認会計士の資格をお持ちの方でも、子育てしながら短時間勤務したい方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。育児などで一旦離れてしまって、キャリアはあるのに職場へ戻りづらい方とか、見つかる仕事が家でできる会計入力しかないような方。そういった方は、AGS FASに来て力を発揮してほしいですね。AGS FASは各メンバーがそれぞれの都合に応じたメリハリのついた働き方ができる会社なので、それでキャリアアップできれば、Win-Winだと思います。また、かつての私のように、やりたいことがあるのに実現できない、どこに行っても一緒だろうと考えているような人に、M&Aという分野もあるということを知って、検討してほしいと願っています。辛酸を嘗めて蓄えてきた知識を発揮できる場所が、AGS FASにはあります。